総合診療教育研究センター長
総合診療教育研究センターへ
ようこそ
総合診療とは:これからの時代に必要な“3つのまるごと”を支える医療
日本では今後50年にわたり、人口減少とともに高齢化がさらに加速し、医療を必要とする人(支えられる人)が増える一方で、医療を担う人(支える人)は減少していきます。こうした社会においては、単に病気や臓器を診るだけではなく、「人をまるごと診る力」「地域全体を支える力」が必要とされています。
たとえば、高齢の患者が「糖尿病」「心不全」「認知症」「変形性関節症」「うつ症状」などを同時に抱えているのは、もはや特別なことではありません。このようなケースでは、「それぞれの臓器に詳しい医師に一人ずつ診てもらえばいい」という従来の発想では、現場が立ち行かなくなります。
なぜなら――
- 地域には専門医が十分に揃っていないことが多く、
- 高齢者にとっては、複数の診療科を通院すること自体が大きな負担になり、
- 病気ごとに処方された薬が積み重なり、ポリファーマシー(多剤併用)による副作用や服薬管理の難しさが新たな健康リスクとなるからです。
こうした状況では、それぞれの専門領域の知見を尊重しつつ、全体を俯瞰し、最適なバランスを考える力が不可欠です。
つまり、今後の医療には、病名や臓器だけでなく、その人の生活背景や価値観まで含めて“人をまるごと診る”視点がますます重要になります。
そしてこの視点は、病院の中だけで完結するものではありません。診療所の医師や介護・福祉の専門職、多職種チームと連携しながら、「地域をまるごと支える」視野をもって取り組む必要があります。
たとえば、認知症の進行によって通院が困難になった患者が、地域の移動支援サービスを利用できるかどうか。ひとり暮らしの高齢者が入院後に自宅で安全に生活を再開できるよう、住宅改修や訪問看護、家族支援の手が届くかどうか。これらは病院内の医療行為だけでは完結しない問題であり、地域全体の医療・介護・福祉が連動する仕組みづくりが求められます。
私たち医療者は、専門家としての知識と経験をもとに、地域住民や行政と協力しながら、その地域で“健康に暮らし続けられるしくみ”を支えていくパートナーでありたいと考えています。
一方、総合診療の魅力は社会的な意義だけではありません。
たとえば――
- 「呼吸器か消化器か分からないけれど、とにかく体調が悪い」
- 「どの科でも診断がつかず、複数の医療機関を転々としてきた」
- 「症状が多臓器にまたがり、誰が診るべきか分からない」
そんな“行き場のない”患者を前に、全身をまるごと診て、病態を統合的に評価し、診断と支援の糸口を探る――それは診療としての深みと面白さが詰まった、魅力あふれる営みです。
「人」「地域」「臓器」をまるごと診る――この3つの“まるごと”は、三重大学医学部附属病院総合診療部を拠点とした、「三重総診」が掲げる理念そのものであり、私たち総合診療教育研究センターもその連携機関として、地域に根ざした診療を実践しています。
また、世界的にも高齢化は進んでいるので、今後世界の国々が同様の課題に直面することを考えれば、私たちの取り組みは“未来の世界の医療”にとっての先行モデルとなる可能性を秘めています。
教育と研究のハブとしての当センター
当センターは、三重大学と連携し、三重県内でも最大規模の総合診療教育の拠点として機能しています。主に三重大学医学部の4年生から6年生までの臨床実習を広く受け入れており、他大学からの実習希望者も受け入れています。初期研修医は三重大学医学部附属病院の市立伊勢総合病院コースとして4名/年程度採用していますが、加えて他病院からの研修希望も多く、三重県全体の総合診療力の底上げのため、積極的に受け入れています。
当院では、教育だけでなく、日々の臨床に根ざした研究活動にも力を入れています。亀山市立医療センター、名張市立病院などと連携しての多施設共同研究や、県外の医療機関と連携したランダム化比較試験にも参加しています。感染症や膠原病など「臓器横断的な領域」において症例報告も多数発表しています(詳細リンク)。
また、働きながら三重大学大学院に在籍し、社会人大学院生として博士号を取得することも可能です。現場とアカデミアを行き来できる環境は、知の探究にも挑戦したい医師にとって理想的なフィールドです。
総合診療という選択が、未来をつくる
総合診療医は「患者の最初の相談相手」であり「すべての科の隣に立てる医師」です。診断の難しい症例、社会的課題が絡むケース、どこに相談して良いかわからない人々に、最後のよりどころとして寄り添う存在です。
この領域は、社会課題と最先端医療が交差するフィールドです。あなたの知性と情熱が、確実に社会を変える力になります。
私たちと一緒に、地域の未来だけでなく、日本の医療の未来、そして世界の超高齢社会の未来をつくっていきましょう。
センター長院外活動
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広報いせ
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市民公開講座
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TV出演
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大学講義
書籍出版
- マイナスから始める性感染症診療(中外医学社)
- 治療(CHIRYO)2025年107巻5月号(No.6)いつもの発熱診療をすり抜ける重症感染症/不登校に対して医師ができること(南山堂)
- 日本医事新報 特集:深掘り! 腎盂腎炎診療 2024年 8/10 号(日本医事新報社)
- ねころんで読める性感染症(メディカ出版)
- ジェネラリストのための臨床感染症入門(文光堂)
- ジェネラリストのための性感染症入門(文光堂)